最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)983号 判決 1958年5月20日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人蒔田太郎の上告理由第一点について。
合資会社の内部の関係については、定款または商法に別段の規定がないときは、組合に関する民法の規定を準用すべきである(商法六八条、一四七条参照)。ところで、その決議については、なんら株式会社に関する商法二三二条または法人に関する民法六二条の如き規定はなく、したがつて、所論のような通知の手続は、法律上必要ではない。その他原審認定の事実関係の下において、本件除名決議が条理に反するということもできない。それ故、所論は理由がない。
同第二、三点について。
本件記録によれば、本訴において、被上告会社は、要するに上告人を被上告会社から除名する旨の判決を求め、第一、二審裁判所とも、右趣旨の請求を認容していることが認められる。所論は、これと異なる独自の見解に立脚して原判決を攻撃するもので、ひつきよう前提を欠き採ることを得ないものである。
同第四点について。
原審挙示の各証拠を綜合すれば、上告人が所論辞任の前にも甲九号証の一ないし四のような内容の書面を取引先に配付した旨の原審の認定は首肯できないわけではない。所論は、原審の適法になした事実認定を非難するに帰し、採用できない。
同第五、六点について。
原審挙示の証拠によれば、上告人は原判示のように自己または第三者のために被上告会社の営業の部類に属する取引をなし、同時に、被上告会社と同種の営業を目的とする他の会社の取締役となつたことを認めることができる。論旨第五点引用の判例は、本件と事情を異にし、本件に適切でない。所論は、結局原審の適法になした事実認定を争い、それを前提として原判決を攻撃するもので採用し難い。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)